古来から今に至るまで存在する民間金融システム「無尽」とは?山梨を例に簡単に解説!

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日本というのは地理的な特徴が極めて特異であるため、独自の文化が生まれやすい傾向にあります。その「地理的な特徴」というのは主に二つあります。一つは「海に囲まれているため、大陸の影響をうけにくい」ということ。二つ目は「国内でもいたるところに山や川があるため、さらに閉鎖的な地域がうまれやすい」ということです。いってみれば「極めて閉鎖的な空間が多い」ということです。

 

この「閉鎖的な空間である」ということは、何かあったときにその地域の外からの援助というのが受けにくい特徴があります。そこでうまれたのが「閉鎖的な空間内で助け合うシステム」です。いわゆる、互助です。

 

そのシステムの際たる例が「無尽」というシステムなんです。これ、日本古来からある民間金融システムなんですけど、知っていますか?ちなみに、消費者金融会社である「アコム」のキャラクターである「むじんくん」はこの「無尽」からとられているんですよ。今回はその日本独自の進化をとげた「無尽」について説明します。ちなみに、驚くべきことに今なおこの無尽というシステムは地域に生き残っているんです。




無尽とは、日本古来からの民間金融システム


無尽はなんと鎌倉時代から登場したといわれています。簡単なイメージとしては「生命保険+損害保険」のようなもので、「何かあった時の相互扶助システム」といった感じでしょう。例えば、「冠婚葬祭」がいい例だと思います。例えば、10戸の村があるとします。10戸の村人は何かあったときに備えて、地域毎に異なりますがそれぞれお金や米などを拠出します。そして、その拠出している人の誰がに何かが緊急事態が発生した場合、その蓄えたお金やお米から還元するというものです。

 

この仕組みって完全に現代の生命保険や損害保険と同じ仕組みですよね?異なるのは、「民間」か「企業」かの違いだけです。日本というのは先述したとおり閉鎖的な空間であると同時に、自然災害も多いためこのような仕組みが自然発生的に各地にうまれたのだと思います。つまり、「一人でなんとかなる社会ではなかった」ということです。

 

この仕組みは現代では生命保険会社や損害保険会社が企業として行っていますが、なんと今なお地域によっては生き続けている仕組みなんです。具体例をみてみましょう。

 

各地に生き続ける無尽


日本各地に無尽のシステムは存続しており、特に沖縄県は県民の約半数がこの無尽に参加しているといわれています。また、岐阜の飛騨地方や福島県の会津地方、そして各地の漁村や農村に多く残っているんです。

 

面白いのが、この地域の特徴というのは先述した「物理的に閉鎖的な空間」に極めて合致します。沖縄は本島とも海で隔たっていますし、飛騨地方や会津地方も四方を山に囲まれています。



山梨の無尽を紹介


その中でも色濃く残る地域があります。それが、「山梨県」です。山梨県というのは地理的にも山に囲まれているため、いわゆる物理的な閉鎖空間にも合致しますよね。山梨の無尽は主に「集まり」という意味で現代は使われており、例えば飲み会のことを「無尽」といったりします。そのため、居酒屋でも「無尽承ります」という紙が貼ってあることもあるんです。

 

また、昔ながらの純粋な無尽、つまり「飲み会で集まり、そこで拠出金をみなから徴収する」という無尽もありますし、「徴収金という仕組みを除外した無尽」である「同好会」みたいな無尽もあります。しかも、人によっては複数個の無尽に属しているというのも当たり前なんです。

 

山梨というのは武田信玄やその前の時代から、四方を山で囲まれておりかつ川の氾濫があいつぐというまさに「閉鎖的空間+自然発生多発地域」にずばり合致します。そのため、この無尽というシステムはまさになくてはならないシステムだったのでしょう。現在では交通機関の発達やインターネットの進化等により「閉鎖的な空間」というのが解消されたにもかかわらず、いまなおこのような無形文化が残っているというのは非常に興味深い事象ですよね。

 

そこにある根本は「助け合う仕組み」です。同調圧力や金融リテラシー等の問題もあるのかもしれませんが、もしかしたら生命保険の加入率が世界でも極めて高い日本というのは、この無尽のDNAを受継いでいるからかもしれませんね。




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