松尾芭蕉の忍者説はどこから発生したのか?史実から検証してみた

「松尾芭蕉」といえば、誰もがしる「俳諧師」ですよね。東北・北陸を周遊して作成した「奥の細道」は誰もが知る有名な紀行文ですよね。「月日は百代の過客にして、行きかう年も又旅人也」という冒頭は授業でも覚えさせられたほどです。

 

また、俳句では「古池や 蛙飛び込む 水の音」や「松島や ああ松島や 松島や」は特に有名な俳句ですよね。個人的には「夏草や 兵どもが 夢の跡」が特に好みです。城跡を見て歩くのが趣味の自分にとっては、史跡に行くたびにこの情景が思い浮かびます。

 

ところでこの松尾芭蕉ですが、一説に「江戸幕府から使命を受けた忍者だった?」という説があるのをご存知でしょうか??この説、どこからどうやってうまれたのか、検証します。こういう歴史の「if」の話はけっこう面白いんですよ。その人をより深く知るトリガーにもなります。




そもそも松尾芭蕉ってどんな人?


芭蕉は1644年の江戸時代前期に誕生しました。出身地がポイントなんですが、なんとあの忍者で有名な「伊賀」です。「伊賀忍者」で一番有名な人物といえば、徳川家康の配下である「服部半蔵」ですが、芭蕉はなんと18歳の時に服部半蔵の従兄弟の一族に仕えています。このことも、芭蕉の忍者伝説が広まった一因です。

芭蕉は46歳の時に弟子の「曾良」という人物と共に東北・北陸を回る旅にでます。道中、史跡や名跡をまわり、それらをまとめた紀行文が「奥の細道」というわけです。もちろん、徘徊師として俳句も読んでおり、そこでいくつもの名作が誕生しました。

 

この段階では、忍者で有名な「伊賀生まれであること」と「服部半蔵と間接的な繋がりがある」という二つのポイントしか忍者にかすっていません。問題となるのが、その「奥の細道」なんです。もう一段階、深みにもぐっていきますよ。

 

芭蕉の進んだスピード


問題となるのは、「芭蕉の進んだスピード」です。芭蕉が進んだルートというのは、江戸を出発し、東北をぐるりと回ったあと、北陸にまわり、ゴールは美濃(岐阜)です。その工程はなんと2,400kmにも及びます。芭蕉はその2400kmを約150日で到達します。これは、1日あたりで計算すると約16kmなので、「あれ?それならいけそうじゃな?」と思うかもしれませんが・・・

 

驚くことなかれ、このとき芭蕉の年齢は「46歳」です。平均寿命が今ほど長くない江戸時代前期でいえば「おじいちゃん」です。しかもですよ、今と比べて道も全然整備されてませんし、東北や北陸は東海道と比べて山が多く、道もごつごつです。それに、ナイキやアディダスのようないけてるランニングシューズやウォーキングシューズもございません。

 

つまり、芭蕉のような年齢で1日16kmもすすむとなると「強靭・壮健な身体」である必要があります。そこからも、「芭蕉は忍者なのでは?」という風説がうまれたのではないかと思います。




では、なんのために?


そして、もし芭蕉が忍者だとしたら、その「目的」です。なんのために、芭蕉は東北・北陸を闊歩したのでしょうか?それは、この時代と芭蕉が歩いたエリアにポイントがあります。芭蕉が生きた江戸前期というのは、戦国時代まもないこともあり、徳川政権としての安定期ではありませんでした。地方大名には、巨大で有力な大名がおり、下手をしたら徳川幕府に弓を翻す可能性さえありました。その代表例が「東北」です。西国や関東に関しては、徳川家の有力な譜代大名や親類を配置していましたが、東北や北陸は違いました。

 

そして、東北と北陸の大大名といえば「伊達家」と「前田家」ですよね。そのため、徳川幕府は隠密として芭蕉に東北と北陸の旅をさせて、「反乱の兆しはないか?」「財政状況は軍備はどのような感じか?」を探らせたのでは?という憶測が成り立ちます。

 

そもそも、この頃というのは通行も決して自由ではなく、また150日もの旅というのはとてつもない旅費がかかります。そのような「交通手形」や「旅費」の面を鑑みても、幕府のバックアップがあったのでは?と思わせる所以です。

 

と、いうのが客観的な芭蕉に対する忍者説流布の要因です。何が正しくて何が間違っている、というわけではなく、歴史にはこのような様々な観点から、ああではなかろうか、こうではなかろうかという思いをめぐらすことができるのも面白いところです。源義経=チンギス・ハン説も同様ですが。このような話を調べていくにつれ、その箇所の歴史に詳しくなったり、歴史にのめりこんだりする。それはそれで良いことだと思います。




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